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ARTISAN
職人達
受け継がれるものは確かな「人」の技
COME INTO A TECHNIQUE
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親指に染み込む職人の証

指付け

調液担当主任/松嶋 良浩

工場の最奥で陳列された染料と睨み合う一人の男性がいた。入社25年目を迎え、液場で指揮を執る松嶋だ。

彼はスクリーンで染め上げる工程の前に、本当にその色が「求めている色」なのかどうかの最終チェックを任されている。
しっかりと生地に入り込むように、染料は糊を合わせて粘着性を持たせるが、染める生地によっても様々な変化を見せる。
配合量がわずか0.01gの違いでも染め上がりの濃淡を大きく左右してしまうのだ。

その繊細な色の出方を調整するのが研ぎ澄まされた職人の「感性」。和歌山染工では創業時から、人の手によってこの技術を継承し続けてきた。
「気温や天候によっても仕上がりが異なる。何度も何度も繰り返し、自分の感性を磨き続けなければならない。」
そう語る松嶋の右手親指には染み込んだ染料の後が残っていた。

染め上がりを左右する、わずか1ミリの世界

型合わせ

スクリーンプリント主任/喜多 浩二

フラットスクリーンが動作している様子を初めて見た者は、川のように滑らかに流れる工程に思わず感嘆のため息を漏らす。
スケージと呼ばれる「型」に1つめの染料が流し込まれ、白い生地に「色」が染み込む。
そしてそれが次の型に送り出され、また新たな「色」を重ねていく。
緻密な動きを繰り返して描き出されるデザインは、どれも繊細な線で形成され美しい。
型が1ミリでもずれてしまえばどうだろうか…。
あらゆる色が混ざり合ってしまい、とてもデザインにはならないだろう。

スクリーンを標準始動させる前に型の配置を決めるのは型合わせ歴10年目の喜多。
ひとつのデザインを染め上げるのに毎回20型以上の調整を行っているという。
調整しては試し刷りを繰り返しようやく本番の生地を染め始めることができる。
生地の厚さによっても型を押す際の適した圧が異なる。数えられるだけでも100種類以上の生地になる。
喜多の手にはそのすべての特性が把握されているのだ。

独自の感性が発揮されるクリエイティブな技

色作り

配色担当/富松 明彦

和歌山染工にはカラーピッチと呼ばれる「色集約本」がある。
同じ赤でも、濃い赤色や薄い赤色、少しくすみがかった朱色など、まだ名前もつけられていない数知れない色が収められている。
「色作り」をする富松は、その数ある色の中からそれぞれのデザイン画に最適な色を当てはめていく。
微妙な色を識別する力だけでなくデザイン力が必要な、「その人ならではの感性」が求められる職人技。
富松はそれを楽しみながらこなしているというから驚きだ。

「色作りにはデザイン力が求められる。自分が選んだ色の製品が店頭に並んでいるのを見つけたときの喜びは、たとえようのないもの。
また捺染は紙に刷るわけではないので染め上がりが定まらないこともあるが、生地にのったときの独特の色合いが好きだ」
そう語る彼の瞳は新たな色を模索していた。

一言で捺染と言っても、その手法は多岐にわたる。
最新機器を駆使すれば一様に美しく染め上げることができる、というわけではない。
和歌山染工株式会社の捺染技術は、時代の経過とともに数々の職人の感性によって継承されつづけていく。